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カステイラと淡雪寒

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ある本に載っていたカステラに恋いこがれ、6月に入ったとたん久しぶりに青空が覗いた日曜の午前中、久しぶりにお菓子作りをする。

その本には「カステイラ」と書かれてあり、著者の方が「義母に教わった」もので、新聞紙で型を作って焼くという。正方形の新聞紙の型に収まった美味しそうなカステイラの写真を見るたびに、ふんわりした卵味のカステイラの食感を思い出し、いつか作ろう作ろうと思っていて、それがこの日になる。

まずは型作り。新聞紙を重ねて切るところから始まる。本には50センチ四方と書かれてあり、実際に50センチ四方の正方形を測ると、思っていたよりもずっと大きなことに驚く。本の点線、実線どおりに、切り込みをいれたり折り曲げたりし、最後にはホチキスでパチンと留める。工作をしているようで、お菓子を作るためだということを一瞬忘れそうになる。出来上がってみると、50センチ四方だった正方形が、16センチ四方の四角い型になった。今度は思っていたよりも小さなことに驚く。新聞紙のインクの匂いは、甘いカステイラの匂いにはまだ辿り着かない。出来た型にオーブンシートをひいて、ようやく材料の用意を始める。

カステイラにバターは必要ないと分かって、また驚く。驚いてばかり。材料を見ると強力粉、卵、砂糖、みりん、サラダ油、はちみつなど、身近なものばかりで安心する。お菓子にしても料理にしても、この一回だけのために用意しなければならない材料があると、それだけでその献立は止めておこうと思ったりもする。材料は身近なものに越したことはない。

卵白と卵黄をそれぞれ良く泡立てる。卵白に砂糖を加えて泡立てたもの、少しすくってなめてみたとき、小さい頃に母が作ってくれたお菓子の味を思い出した。「淡雪寒」というもので、卵白に砂糖を加えて良く泡立てたものに寒天を溶かして固めたもの。母が「あわゆきかん」というのをずっと「あわゆきさん」だと思って、「あわゆきさん、あわゆきさん」と言っていた。「淡雪寒」という素敵な漢字が当てはまるのを知ったのは大人になってから。母が良くお菓子を作ってくれたハンドミキサーは今でも現役。もう30年くらい働いているのに壊れたことがない。

淡雪寒のことを思いながら、カステイラを作る。予熱の終わったオーブンに新聞紙で出来た型に生地を流し込んだものをいれ40分くらい焼くと、ようやく甘いふんわりした卵の匂いがして来た。オーブンから出して粗熱をとる。しばらくして端っこを少し切って食べると、ああ食べたかったカステイラの味だと嬉しくなる。昼から友人と公園で待ち合わせしていた。半分切って弁当と一緒に鞄にいれる。

本のレシピの最後「粗熱をとって冷蔵庫で冷やす」との文字の後に、それまでの文字よりも一段薄い控えめな色で(焼いた翌日が、さらにおいしい)と書いてある。あとの半分に更なる期待を寄せて冷蔵庫にしまった。

by blossoms_0606 | 2008-06-01 00:05 | 日常

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